高千穂神社は、宮崎県西臼杵郡高千穂町に鎮座する由緒ある古社で、約1900年以上の歴史を誇ると伝えられています。日本神話の舞台として名高い高千穂の地を代表する神社であり、国の重要文化財にも指定されています。主祭神は高千穂皇祖神（たかちほすめみおやのかみ）と呼ばれる神々で、天照大神の孫である瓊瓊杵尊（ににぎのみこと）をはじめとした「皇祖神（こうそしん）」を祀っています。また、境内には「高千穂十八社」と呼ばれる周辺の神社群の中心としての役割も担っており、高千穂全体の信仰の中枢に位置する存在です。
高千穂といえば、天照大神が天岩戸に隠れた「天岩戸神話」や、瓊瓊杵尊が高天原から降臨した「天孫降臨神話」など、日本神話の重要な舞台として知られています。そのため高千穂神社は、古代から「神話のふるさと」を象徴する聖地として人々の信仰を集めてきました。平安時代には『延喜式神名帳』に名を連ねる式内社とされ、その格式の高さをうかがうことができます。
社殿は室町時代に再建されたもので、本殿・幣殿・拝殿が一体となった「権現造（ごんげんづくり）」の形式をとっています。この建築様式は当時の神仏習合の影響を色濃く残しており、歴史的にも貴重な建造物です。現在の本殿は国の重要文化財に指定されており、素朴ながらも荘厳な雰囲気を湛えています。境内には樹齢800年を超える杉の巨木が立ち並び、特に夫婦杉（めおとすぎ）は参拝者に人気です。この2本の杉は根元で一体となっており、夫婦や恋人が手をつないで3周すると縁結びや家内安全の御利益があると伝えられています。
また、高千穂神社は農業や厄除け、縁結びの神としても広く信仰されています。古来より地域住民から厚く崇敬され、五穀豊穣や平穏な暮らしを祈る祭祀が絶えず営まれてきました。その象徴的な行事が、毎年11月中旬から翌年2月にかけて行われる「高千穂夜神楽（よかぐら）」です。夜神楽は33番の神楽舞から成る伝統芸能で、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。天岩戸神話を題材とした「岩戸開き」や、夫婦神の和合を描く「鈿女命（うずめのみこと）」の舞など、神々と人々を結ぶ神聖な舞として地域に根付いています。
境内の静謐な空気や神話の息吹を感じさせる景観は、訪れる人々に深い感銘を与えます。特に、夜神楽を鑑賞できる特別な機会には、神と人が交流するような独特の雰囲気に包まれ、古代から続く「神楽」の意味を実感することができるでしょう。
高千穂神社は、神話の舞台に立つ特別な神社として、日本の原初的な信仰の姿を今に伝えています。厳かな本殿、神秘的な夫婦杉、そして神々の物語を舞で再現する夜神楽——そのすべてが訪れる人を魅了し、日本文化の根幹にある「神と自然と人とのつながり」を体感させてくれるのです。
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